ReliaWind お客様事例

ReliaWind お客様事例

EU コンソーシアム ReliaWind が PTC Windchill Quality Solutions を使用して次世代の風力タービンを強化

ReliaWind のロゴPTC Windchill Quality Solutions が、ReliaWind による将来の陸上および洋上風力タービンの設計、運転、メンテナンスの管理を支援。

ReliaWind コンソーシアム (EU)

ReliaWind は、次世代風力タービンのツール、モデル、設計ガイドラインを開発する風力エネルギー バリュー チェーンの主要関係者が参加する、欧州全域を対象とした初のプロジェクトです。2007 年 3 月に再生可能エネルギーを検討するために欧州連合 (EU) 理事会が初会合を開き、「2020 年までに EU のエネルギー需要の少なくとも 20 パーセントを再生可能エネルギーで賄うこと」に合意しました。

この目標の達成には風力発電が最も大きく寄与すると確信し、エネルギー効率の向上と二酸化炭素排出量の 20 パーセントの削減を 2020 年までに達成するため、EU 理事会は産学界をリードする 10 の組織から成るコンソーシアムに、風力タービンの設計、運転、メンテナンスを最適化するための信頼性に重点を置いた調査の実施を依頼しました。優れた次世代のソリューションを開発するために、コンソーシアムのメンバーは PTC Windchill Quality Solutions を使用して現在の風力タービンの信頼性および保全性のデータを解析し、将来のシステム設計を向上させる方法について検討を重ねました。

状況

2020 年までに EU のエネルギー需要に占める再生可能エネルギーの割合を少なくとも 20 パーセントに引き上げるには、洋上風力発電所の開発が不可欠です。しかし、変わりやすい天候、厳しい荷重条件、海洋大気、海水、アクセスの難しさもあり、風力タービンの洋上への設置、運転、メンテナンスに伴うリスクは大幅に高くなります。洋上風力発電所を投資先として魅力あるものにするため、EU 理事会は風力タービンの全般的な信頼性と保全性を最大限に高めることが不可欠であると認識しています。

信頼性と保全性を最大限に高めることは決して容易ではありません。洋上に風力タービンを配備するには、高度な腐食防止テクノロジを実装し、タービンの環境制御部分に電気ユニットを配置する必要があります。さらに、洋上で維持修理を行うメンテナンス戦略では、修理にかかる時間を短縮する必要があるだけでなく、アクセス方法を改善し、風と波の条件の影響を抑える必要があります。

タービン"信頼性の高い設計" を進めるために、EU 理事会は ReliaWind コンソーシアムを設立し、参加する 10 の組織に 550 万ユーロを寄付して、風力タービンの設計、建設、メンテナンス方法を改善する期間として 3 年間を設定しました。ReliaWind は総予算 770 万ユーロをかけ、風力タービンに特化した信頼性モデルの開発と、風力エネルギー部門のすべての関係者へのモデルの提供を行いました。

ReliaWind ではこれらのモデルを使用して信頼性に基づいたアプローチを開発事業に適用する方法について関係者にトレーニングを行うだけでなく、この調査が 2015 年以降の新しいタービン建設に影響を与えることを狙い、ReliaWind が把握した内容について、会議、ワークショップ、Web サイト、メディア イニシアチブを通じてほかの組織への周知も行いました。

洋上風力発電所のメリット

陸上風力発電所と比較して、洋上風力発電所には以下のような多くのメリットがあります。

  • 洋上の風はパターンの種類が豊富で、陸上よりも安定的に風の乱流が生じるので、タービン効率が上昇します。
  • 洋上は日中に風がよく吹く傾向にあり、需要のピーク時により多く発電できます。
  • 人口密集地域の近くに洋上発電所を設置でき、市街地に送電する距離が短くなります。
  • 陸上発電所を持てない EU 各国でも風力発電を実施できる可能性があります。
  • 鳥類に対する環境影響が軽減されます。

洋上風力発電所の信頼性に関する課題

洋上発電所には大きなメリットがいくつかありますが、以下の必要性も含め、信頼性に関する課題も多いと言えます。

  • 強風や厳しい天候条件に対応できる、耐久性の高いブレード、柱などのコンポーネント
  • 高信頼性コンポーネントの設計を最小限に抑え簡略化するため、全体のコンポーネント数を削減
  • 故障したコンポーネントを簡単に交換するためのモジュール式の設計
  • 部品の表面と内部を保護するための厳密な耐食および水封技術
  • 発電所までのアクセスが難しく費用がかかるため、できるだけ多くの予防保全を自動化しサービス間隔を延長

目標

ReliaWind の最も重要な目標は、洋上風力発電所と陸上発電所の設置費用を同程度にすることにより、風力発電セクターを発展させることでした。陸上タービンの場合、1 年間で 1 回以上の故障は一般的ですが、洋上タービンのダウンタイムおよび修理に伴う費用は陸上よりもずっと高額であるため、この程度の信頼性では容認されません。洋上発電所の開発を投資家にとって魅力あるものにするには、稼動率が 97 パーセントを超える必要があります。

この目標を達成するために、ReliaWind は陸上および洋上タービンに求められる定量的信頼性の目標を以下のように複数設定しました。

  • MTBF (平均故障間隔) を、陸上タービンの場合 10 パーセント、洋上タービンの場合 20 パーセント向上させる。
  • MTTR (平均修理時間) を、陸上タービンの場合 20 パーセント、洋上タービンの場合 50 パーセント短縮する。
  • 稼動率を、陸上タービンの場合 97 ~ 98 パーセントから 98 ~ 99 パーセントに、洋上タービンの場合 85 ~ 90 パーセントから 97 ~ 98 パーセントに引き上げる。
  • CoE (エネルギー コスト) をキロワット/時あたり 0.04 ユーロ未満に引き下げる。

アプローチ

風力タービンの信頼性をより深く理解し将来の設計にプラスの影響を与えるために、ReliaWind は以下のような統合アプローチで現在のシステムの解析を行いました。

  1. 製造メーカーとサプライヤから既存のタービンに関する故障およびメンテナンスのデータを収集し、そのデータを標準化します。PTC Windchill Prediction を使用して、システムの階層を定義し、システム、サブシステム、コンポーネントのレベルで信頼性予測を行い、故障率が最も高いものを特定します。
  2. PTC Windchill OpSim を使用して、RBD (信頼性ブロック図) を作成し、収集したデータを統合して稼動率、非稼動率、MTBF、故障率、予想される故障数、平均非稼動率、総ダウンタイム、故障頻度、ハザード率などの指標を計算します。
  3. PTC Windchill FMEA を使用して、故障モード、原因、その影響を特定し、システムへの潜在的な影響を評価して、重大度ランキングに基づいて許容できない影響をなくすまたは軽減する方法を判断します。

結果

データ収集と標準化棒グラフ

  • 役割: 解析結果の質は元になるデータで決まります。風力タービンに関するこれまでの稼動率研究は質の悪い大まかなデータに限られていたため、現場のタービンから故障およびメンテナンスに関する質の良いデータを収集して準備することが最優先事項でした。
  • 使用方法: ReliaWind では風力発電所およびタービン コンポーネント製造メーカーから入手したデータベース、故障ログ、手作業の記録、作業命令書、月次運転レポートをレビューし、標準的なタービン分類と一般的なデータ構造フォーマットを作成しました。
  • 判明した内容: データベースを作成し、データを入力することで、ReliaWind は、世界各国の 250 を超える風力発電所の製造メーカーと運転期間が 1 ~ 15 年の各風力発電所の正当かつ有効なフィールド データを手にしました。ReliaWind は 290 以上のタービンから収集した故障データに基づいて、運転復帰に少なくとも手導での再起動が必要となる 1 時間以上のタービンの停止を故障と定義しました。質の高いデータを入手した ReliaWind は、PTC Windchill Quality Solutions を使用してタービンの信頼性の解析を開始し、徐々に解明が進みました。

PTC Windchill Prediction

  • 役割: 最も一般的な信頼性解析の 1 つである信頼性予測では、部品またはコンポーネントの故障率を推定します。通常、このような故障率は、MIL-HDBK-217、Telcordia (旧 Bellcore)、IEC TR 62380 などの広く採用されている標準規格の計算結果をベースにしています。これらの各標準規格からは、応力、部品の品質、温度、その他の環境要因の値に基づいてコンポーネントの故障率を算出するための数式や故障率モデルが得られます。システム全体の故障率はすべてのコンポーネントの故障率の和です。
  • 使用方法: ReliaWind では 2 つの一般的な風力タービン構成について、12 の個別のサブシステムをシステム定義に統合して、PTC Windchill Prediction 独自の機能を生かし、同一または同様のコンポーネントの現場故障データ、サプライヤのデータ、非電子部品および機械部品のさまざまな故障データ ハンドブックとさまざまな標準規格の計算モデルを組み合わせ、推定故障率を算出しました。
  • 判明した内容: これらの構成のうち最も故障率が高かったサブシステムは、ローター モジュール、ピッチ システム、電源モジュール、ナセル モジュールでした。この結果から、ReliaWind はこれらのサブシステムの信頼性を改善する方法の検討に着手しました。可能な方法としては、さらに信頼性の高いコンポーネントの使用、新しいテクノロジまたはプロセスの採用、システム全体の故障につながる単一障害点の除去が考えられます。

PTC Windchill OpSim (Optimization and Simulation: 最適化とシミュレーション)表

  • 役割: 信頼性ブロック図 (RBD) は、高度な数学的アルゴリズムを使用してシステムを解析し総合的な信頼性および保全性の指標を明らかにするために、複雑なシステムを視覚的に表示したものです。信頼性予測ではすべてのコンポーネントが直列に構成されると仮定しますが、RBD では冗長性やバックアップ システムなどの耐障害性メカニズムも考慮することができます。
  • 使用方法: PTC Windchill OpSim では並列冗長と直列冗長およびバックアップ システムを簡単に追加できるため、ReliaWind はトレードオフ研究を行い、このようなシステム設計変更が稼動率に対してコンポーネントとメンテナンスに関する費用と複雑性を増すほどの影響を与えるかどうかを評価できました。
  • 判明した内容: 1 年間 (8760 運転時間) の各月の結果から、ReliaWind は直列ブロックの RBD を作成し、タービンのシステム故障率が経時的に一定であることを確認しました。稼動率が定常状態に達するには、MTTR (平均修理時間) の 4 倍の時間がかかりました。これは稼動率関数の解析的定義に基づくものです。PTC Windchill OpSim の高度なシミュレーションおよび最適化技術を利用して、ReliaWind は冗長システムや予備コンポーネントの使用などの複雑なシステム シナリオを解析しました。将来のタービンの状態を予測できるので、より効果的かつ予防的なメンテナンス計画とリソースのスケジューリングを行うことで運転およびメンテナンス費用をどの程度削減できるか、タービン稼動率をどの程度向上させることができるかを評価できました。

PTC Windchill FMEA

  • 役割: FMEA (故障モードとその影響の解析) は、システム設計とパフォーマンスを特定のシステム レベルで解析するためのボトムアップ的アプローチです。これには、潜在的なすべての故障モードの特定、各モードの終点効果の調査、許容できない影響を排除または低減するための各影響のリスク評価が含まれています。
  • 使用方法: ReliaWind は、コンポーネント レベルから解析を開始しモード臨界を考慮する、部品レベルの FMEA を実施する際、PTC Windchill FMEA を使用し、MIL-STD-1629 に従いました。MIL-STD-1629 は、古くから認知されている標準であり、世界中の政府当局、軍事当局、商業組織がモード臨界の計算に使用しています。モードのランク付けを行うことで、ReliaWind はタービンの稼動率に最も大きな影響を与えるモードの許容できない影響を排除または低減することに集中して取り組むことができました。
  • 判明した内容: 特定された 81 のモードを各モードの発生確率と重大性分類に基づいて臨界マトリックスに配分することで、ReliaWind ではどのモードが最大のリスクを示しているかを簡単に調べることができ、その発生を排除または低減するために必要な是正措置の決定に集中することができました。故障検出方法を見出し、致命的で重大なモードの補正条件を特定して、信頼性、コンポーネントの寿命、タービン稼動率を最大化しました。発電量と、重要なコンポーネントにかかる負荷を最適化するために、監視制御、診断、予測のための最高のセンシング技術を実装することが必要でした。

成果

3 年間にわたるプロジェクトを締めくくる前に、ReliaWind は以下のように成果目標を達成しました。

  • 共通の手順および標準規格を提供し、さまざまなタービン製造メーカーと顧客の間の相互運用性を保証
  • テクノロジ、メソッド、アプリケーションを一貫性のあるリモート制御およびモニタリング ツールに統合
  • 運転およびメンテナンスの最適化をサポートし、タービンの稼動率を最大化して風力エネルギーのコストを最小限に抑える、一貫性のあるアプリケーションを開発
  • 将来の設計活動に関する信頼性に基づいたアプローチを採用する際に必要な、ツールに関するトレーニングをパートナーやほかの関係者に提供
  • 会議、ワークショップ、Web サイト、メディア イニシアチブを通じて、EU の風力エネルギー セクターにこのプロジェクトで判明した内容を発表

結論

PTC Windchill Quality Solutions のような、完全に統合された信頼性解析ツールセットのメリットは、一元化されたデータを複数の解析モジュールで使用できることにあります。PTC Windchill Quality Solutions ではエラーが生じやすくて時間のかかる冗長なデータ入力プロセスが不要になることに加えて、レガシー情報を効果的に活用して実環境で得られた結果を信頼性予測計算で使用し、新しいシステム設計の開発をサポートできます。

システム指標を計算し、そのデータをリスク解析の入力データとして使用できるため、PTC Windchill FMEA およびフォルト ツリー モジュールでは部品故障がシステム故障の要因となるシステム リスクの発生可能性と重大度を定量化することができます。複数の PTC Windchill Quality Solutions モジュールを使用した完全に統合された解析では、システムの信頼性のさまざまな次元が同時に考慮されるため、時間を節約し、解析作業を合理化することができます。

ケース スタディのソース: ReliaWind EWEA2011 サイド イベント: 「Improving Turbine Reliability」、2011 年 3 月 15 日、ブリュッセル、「Design for Reliability - a FMEA Study」、ステファノ・バルバティ (Stefano Barbati) 氏およびルカ・バルバティ (Luca Barbati) 氏、旧 Relex Software Corporation Italia、イタリア